福祉体験学習ガイド

2.体験学習の進め方

Q2-1:体験プログラムはどう組み立てていけばいいのでしょう?

《体験学習の企画は、地域の人々と一緒に考えてみよう》

  福祉教育の体験学習プログラムは、地域の福祉課題や社会資源で大きく変わってくると思います。ゆえに、どこかのマニュアル本を読んで、そのまま模倣して組み立てるというようにはいきません。先駆的な事例に学ぶことは大切ですが、それを参考にしながらも、地域の実態や子どもたちの状況に合わせた企画を考えていきましょう。
  その時、その企画を学校の中だけで、先生方だけで考えようとするよりも、地域の福祉関係者に地域の実情や福祉現場の実態の話を聞きながら、子どもたちに取り組めそうな体験企画を組み立てていく方が効率的ですし、いい企画が組み立てられそうです。教師側で計画や企画を組み立ててからそれを実現できそうな施設や人を探すよりも、子どもたちの体験に適した活動を地域で探しながら、それを活かせる方法で福祉教育のプログラムを組み立てていった方が良い企画ができるのでないでしょうか。

《どんな体験学習プログラムがあるの・・・》

  福祉の体験学習の歴史はあまり長くないので、そのプログラムはまだあまり多くはありません。それでも、福祉課題をかかえた人々との出会いやふれあいを目指すプログラムや福祉施設など福祉の仕事を手伝いをしてくるプログラム、介護や介助の技術を学んだり、障害者が感じるバリアを疑似体験したり、調べるプログラムなどが様々に開発されています。このハンドブックの後の章で、その幾つかについてはその内容が紹介されていますので、進め方の留意点等を参考に、各学校で地域や子どもたちの状況に合わせて自分たちなりのプログラムを組み立ててみてください。

(福祉活動・ボランティア活動メニュー →)

《福祉教育ボランティアが体験学習を支援してくれます》

  福祉の体験学習を教師だけで、企画したり、実施しようとするととても大変です。しかし、福祉の世界では、地域にボランティアがかなりいて、学校から依頼されれば、先生方と一緒になって子どもたちへの福祉教育に取り組みたいという方はたくさんいます。社会福祉協議会では、数年前から「福祉移動教室ボランティア」という人たちが養成され、車椅子介助やガイドヘルプ指導のお手伝いをしてくれますし、施設体験で子どもたちへの付き添いが必要な時には支援してくれる可能性もあります。最近は、大学生も「スクールボランティア」という活動で、障害者と介助ボランティアで一緒に学校へ話をしに行ったり、グループで点字を教える取り組みもしてくれています。こんな地域のサポーターを大いに活用すると、学校関係者で取り組む以上の体験学習が企画できるかもしれません。

 

Q2-2:体験学習をうまく進めるコツは?

「気づき」を引き出すのが体験学習法です

  「体験学習法」という学びの方法は、子どもたちに何か体験をさせればよいというものではありません。私たちは日常生活でも体験から様々なことを学んでいますが、学習プログラムの中に意図的に体験の場を作り出し、そこから何かを学習しようとするのがこの体験学習法です。そこでは、子どもたちが体験の中で感じた「驚き」や「感動」から、自分の中で起こった認識や感情のゆらぎを見つめ直し、何らかの変化である「気づき」を見い出していくことが大切になります。

「ふりかえり」の時間を大切にしましょう

  体験を学びに変えていくためには、体験後に「ふりかえり」の時間がとても重要です。子どもたちに何か体験をさせて「ふりかえりノート」を書かせただけでおしまいでは、十分なふりかえりの時間がもてたと言えるでしょうか。せっかくの体験から子どもたちの「気づき」を引き出そうとすると、子どもたちが体験で感じた「驚き」や「疑問」「感動」をそのままにしておくのではなく、そこで「あれ」と感じた思いや「すごい」と思ったことなどにじっくり目を向け、客観的に自分や自分と他者との関係を見つめ直すことが必要となってきます。その見つめ直しの作業から、自分のなかで当たり前であった認識とは異なる認識が生まれることがあり、それが「気づき」となっていきます。
 このふりかえり作業を自分だけで出来る子どももいますが、教師のちょっとしたアドバイスや仲間との会話から、自分の驚きや疑問に目が向き、自分自身を見つめ直すことができる子どももいます。ゆえに、教師は、いろんな方法を使って、子どもたちがこのふりかえりの時間をうまくもてるよう支援していく必要があります。

「分かち合い」「深め合い」の時間の意義にもっと気づこう

  福祉の現場では、日々の打ち合わせやケース会議をとても大切にします。それは、福祉の世界では他者の生活課題や気持ちを理解するのは簡単でないという認識をもっており、関係者で互いに知っていることや感じたことを語り合い、様々な視点から相手への認識を深めていこうと考えているからのようです。
  福祉の学習でも、人を対象にふれあい体験をすることが多くなりますので、「ふりかえりノート」に感想を書くだけでなく、クラスやグループで、互いが体験してきたことや感じてきたことを語り合う「分かち合い」や「深め合い」の時間をもつことをもっと大事にしたいと思います。ほかの友だちの話から、自分では気づかなかったことを発見できる場合もありますし、自分で意識化できていなくても無意識に感じていたことに気づかされるような場合もあります。また、いろんな子どもたちの感想や意見が交換されることにより、同じ体験や交流した相手が深みをもって見えてくることもあります。
  なお、こんな「分かち合い」や「深め合い」の時間に、福祉のことをよく知っている人にアドバイザーとして来てもらうのも1つの方法です。教師では想像力が及ばない、子どもたちの気づきを引き出してもらえる可能性もあるのでないでしょうか。

 

Q2-3:どこに相談すればいいですか?

◆先駆的な学校や教師に学ぼう

 福祉教育についてやはり一番頼りになるのは、これまで福祉教育に積極的に取り組んでこられた先駆的な学校や先生方です。ボランティア協力校や福祉教育研究校に指定され、何年間か福祉教育に取り組んできた学校や先生方はそれなりの経験を重ねておられます。また、最近は総合的な学習の時間で福祉を取りあげ、1年間の学習に取り組み、、子どもたちや地域に反応もみながら、福祉教育についての様々な見識をもつようになっている先生方も増えてきています。そんな学校や先生方からの情報を積極的に活用しましょう。福祉教育に積極的に取り組んでおられる学校や先生方については、「教育委員会」に問い合わせてみてください。

◆社会福祉協議会の上手な利用方法

 学校以外で、福祉教育に身近に相談できるのが「つくば市社会福祉協議会」の「ボランティアセンター」や旧町村単位に置かれている6つの「支部社協」です。社会福祉協議会では、以前から児童生徒のボランティア活動推進事業などに積極的に取り組み、学校とも連携をもっていますし、土日や長期休暇中などには、子どもたちの福祉教育事業に独自に取り組んできた経験があります。また、このハンドブックを編成した福祉教育研究委員会を設置し福祉教育のあり方を研究したり、教師のための福祉教育セミナー等も毎年、開催してくれています。
 特に、ボランティアセンターには福祉教育関係のビデオや書籍等が整備されるとともに、
市内の福祉情報やボランティア活動情報、人材情報が集められ、体験学習を組み立てる場合に、様々な情報提供や協力者の紹介をしてくれます。車椅子介助や高齢者疑似体験の指導者も派遣してくれますので、必要に応じて相談してみるとよいでしょう。

◆もっと学習したい先生のために

  福祉教育について更に学習してみたい場合には、全国社会福祉協議会・茨城県社会福祉協議会・つくば市社会福祉協議会などの機関で、毎年、福祉教育セミナーや福祉教育シンポジウムのようなものが開催されていて、それへの参加が可能です。そのような研修会に積極的に参加して、先進事例や新しい考え方を学んでくることはきっと意味があると思います。それについて情報がほしい方は社会福祉協議会に依頼しておくと、その開催時期に声をかけてくれます。また、全国的な学習の場としては、「日本福祉教育・ボランティア学習学会」「日本ボランティア学習協会」「総合学習の時間・生活科学会」などもありますので、入会してみてはどうでしょうか。

◆福祉情報の入手方法は

 地域の福祉サービスについての情報は、つくば市役所保健福祉部の中にある「福祉相談コーナー」や各課、そのほか、「社会福祉協議会」や「各種社会福祉施設」などで得ることができます。また、介護保険のサービス提供事業者や福祉関係のNPO法人などの市民活動団体にも相談してみることができます。実際には、福祉もかなり専門分化されていますので、視覚障害や聴覚障害など特殊の分野を学習したい場合には、それぞれの専門機関もありますので、その情報を社会福祉協議会や福祉相談コーナーから入手してください。インターネット等から得られる情報もありますが、地域の実態については、やはり地域の関係者から口コミ情報で聞いた方が良い情報が得られる場合もあります。

コラム:教師も一緒に高齢者疑似体験

 社協職員の指導のもと、福祉をテーマに学んできた中学1年生16名と共に、教師も一緒に高齢者疑似体験をしました。
 からだに重りをつけ、サポーターで関節の動きを制限し、白内障の状態を体験するゴーグルをかけて、一時的におおよそ80歳の高齢者の体の状態に変身。学校の近くの大型電気店まで歩き、店内を観察してみました。高齢者に対する理解を深めることとともに、高齢者のために地域や店が行っている工夫や、改善すべき所に気づくことが目的です。
 校内だけでの体験よりは、理解や興味が拡がります。また、教師も一緒に体験することで、同じ立場で感想を言い合い、それを共有することができたり、また伝えたいこと、学んでほしいことが、より明確になったようです。体験活動においては安全確保が基本ですが、他の先生や保護者に協力を求めるなどの工夫により、このようなやり方も可能になるでしょう。

※高齢者疑似体験は、インストラクターの指導のもとに行う専用キットを使った体験学習です。社会福祉協議会の他、企業でも社会貢献活動の一環として、体験の指導を行っているところもありますので、お問い合わせください。

 

 

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