福祉体験学習ガイド

4.体験学習

(1)ゲストティーチャー

Q4-1-1:どんな方にお願いすればよいのでしょうか?

◆障害者は見本品なのでしょうか

 福祉の学習をしようとして場合に、ゲストティーチャーとしてよく学校に招かれるのは、「車椅子を利用している障害者」や「白杖でまちを歩く視覚障害者」など、障害者の中でも特別な方です。そんな方を学校に招いて、日常生活で困られていることをお聞きし、子どもたちに自分たちで何ができるか考えさせようというプログラムが最もよく行われています。また、ある中学校では、子どもたちに年間の個人テーマを選ばせる前に、視覚障害者、聴覚障害者、車椅子利用者など数人のゲストティーチャーを学校に招いて、それぞれの話を聞き、その話を参考に個人テーマを「視覚障害」「聴覚障害」「肢体不自由」と決めさせることにしています。
 ただ、このような企画に対し、最近、「このような扱われ方が本当に障害者のことを考えることに繋がっているのか」「ステレオタイプの障害者像を学ぶ教材になっているだけで、それぞれに人格や感情をもつ個人として尊重できる教育ができているのか」といった疑問が福祉関係者から投げかけられるようになってきています。

◆当事者もゲストティーチャーの勉強を始めています

  地域のいろんな方にゲストティチャーに来てもらうのが一番ですが、やはり、大勢の人前で自分のことをうまく話せる人はそれほど多くはありません。ゲストティーチャー経験者からも、子どもたちに伝えたいことは沢山あったのに、思ったことの半分も伝えられなかったという感想はよく聞きます。
 こんな中で、自分たちの障害や生活を子どもたち向けにきっちり話せるようにとプログラム作りを目指している障害者たちもいます。市内では、例えば、聴覚障害者の団体では、福祉教育に携わるグループを作って研究し、自分たちの1日の生活を図にして、それを説明したり、毎日の生活で使っている機材を学校に持ち込んで、子どもたちに見てもらったりしています。やはり、このように研究したり、工夫された話は子どもたちにも聞きやすいようですので、その努力も評価して、学校教育に積極的に招いていただければと思います。

◆福祉の仕事をしている人やボランティアもゲストティーチャーに!

  当事者以外にも、福祉サービスの仕事をしている人や障害者や高齢者向けのモノを開発している人、当事者の家族や介助者、友人、地域のボランティアや福祉を専門とする研究者など、様々な方が福祉に関わっています。PTA関係者や地域にもこんな方々はたくさんおられると思います。そんな方々もゲストティーチャーに招くと、子どもたちの福祉へのイメージや想像力はかなり広げっていくのでないでしょうか。

◆ステレオタイプ化されやすい障害者

 「手話をつかう聴覚障害者」「点字をつかう視覚障害者」「車椅子で自立生活をしている障害者」というような、典型的なステレオタイプの障害者が地域にそんなに多くいるわけではありません。例えば、視覚障害者のことだけ考えても、点字を使える視覚障害者は、生まれつき目がみえなかったり、比較的若いうちに失明した方だけなのです。中高年になって糖尿病や白内障、緑内障といった病気で目がみえなくなった方はたくさんいますし、眼球に何かがぶつかる事故で視力を失った方もいます。こんな方々は、感覚神経や運動失敬の衰えにより点字の習得は難しいようです。でも、毎日の生活で、自分のそばで本や手紙を読んだり、物をとってくれたり、散歩の介助をしてくれる人は必要です。子どもたちには、こんな視覚障害者のことにも目を向けられるようになってほしいと思います。
 同じように耳の遠いお年寄り、足が不自由で車椅子を利用しているお年寄りなど、いろんな障害者が地域には多数暮らしておられます。そう考えると、子どもたちが暮らす地域社会には、障害者のゲストティーチャーの候補者はたくさんいると想定できます。大事なのは、その対象となる人々をどう学校に引っ張りだすか、どううまく話を引き出し、話をしてもらうかではないでしょうか。

◆話の苦手の人をゲストティーチャーに招くには

  当事者や福祉関係者に、学校で子どもたちの前で話してもらおうとすると、人前で話すことが苦手な人は躊躇しがちです。しかし、いつも話のうまい人ばかり選んでいると、また、特別な障害者や高齢者のイメージをつくりださせてしまいます。地域には、話が得意でなくても一生懸命生きておられる方がたくさんいて、私たちはそういう方と「ともに生きていく」必要があります。
 そこで、ゲストティーチャーには話が苦手な人も引っ張りだしてくる必要があります。そのギャップを埋めたり、話し手の抵抗を少なくするための方法として考えられのが、インタビュー形式で質問をしたり、デジカメ写真やビデオをを撮ってきて、それに基づきながらお話をしてもらう方法です。こんな方法をとると手間はかかりますが、ゲストティーチャーをお願いできる人の幅が広がるように思います。
  なお、最近は、このような話を引き出すサポーターとして活躍するボランティアも登場しています。社会福祉協議会で養成している「福祉移動教室ボランティア」のほか、地域で自立生活を試みる障害者を介助している学生たちが、当事者とともに学校に話に来てくれた事例もあります。こんな方法もどんどん試してみてください。

コラム:ヘルパーをやっているお母さんの話を聞きました

  福祉の学習で何をやってよいか悩んでいたら、クラスのある子どもが「うちのお母さんはヘルパーをやっているよ」「うちのママは訪問看護婦さん」などという声が聞こえてきたので、そのお母さん方に学校へ来てもらって、その仕事やそこで感じておられることなどを話していただきました。
  テレビや教科書から学ぶのとは違って、自分たちの友だちのお母さんがやっている仕事だと思うと、とても身近な印象がするらしく、子どもたちは真剣に耳を傾けていました。 ヘルパーさんの話から、トイレに行くのも食事をするのも人にやってもらわなければならない人や外出したら自分の家もわからなくなるお年寄りが自分たちの地域にも住んでおられることを知って、少しびっくりした感じの子どもたちもいました。また、誰かに役立つ自分の仕事に生きがいを感じている人たちの存在に心をうたれて、将来、自分もあんな看護婦さんになりたいなという子どもの感想もありました。

福祉のゲストティチャー人材バンク情報より

◆Aさん

  聴覚障害のある女性で、子どももあり、お仕事もされています。聴覚障害者のいる家族の1日の生活を、毎日、利用している目覚ましをもってきたり、食事をとる時やテレビをみる時の様子、誰かが尋ねてきたときや電話がかかってきた時に様子などを話してくれます。簡単な手話体験も指導してくれますが、手話は最初が肝心なので、インターネットやビデオ等で自主学習をするのはやめた方がよいと言われます。挨拶の仕方を教えてもらったり、指文字で自分の名前を表現することも教えてくれます。

 

◆Bさん

 筑波山の麓で、もう30年ほどひとり暮らしをされている車椅子利用者です。家の中は暮らしやすいように工夫がされ、毎日の着替えや戸締まりは、自分でこしらえた棒ひとつを道具に自分で行っておられます。そんな自分の生活を写真にとり、その写真を見せながら、自分の毎日の生活をお話ししてくださいます。車椅子を自分で車にのせ、どこにでも車で出かけられます。週に1回、老人ホームにいってボランティア活動もなさっています。最近はパソコンをおぼえて、メールも交換できるようになりました。

 

◆Cさん

  筑波技術短大に留学してきている、アフリカ生まれの視覚障害者です。青年期に視力がなくなり、それから一生懸命日本語を勉強して、日本にやってきました。目がみえなくても、人に聞くことも支援を頼むこともできるので、ひとりで十分暮らせるし、日本中、どこにでも行けるそうです。最近は、パソコンの音声ソフトを使うと、いろいろな情報が集められるようになったので、視覚障害者の生活も随分、楽になったとか。

 

◆Dさん

  筑波山の中腹で、障害者の共同生活をしながら、農業活動や音楽活動を展開されている方です。障害者とともにこれまで行ってきた様々な取り組みや「障害者とともに生きる」ことについて熱く語ってくれます。ただ、話よりも、障害者とともに演奏する音楽を聴いてほしいし、子どもたちと一緒に何かやろうよと言ってくれます。

 

◆Eさん

  成人して、今は施設で暮らす或る重度心身障害者のお母さんです。現在は、その施設や自分が暮らす地域のためのボランティア活動に積極的に取り組んでおられます。そのお子さんが生まれて、一緒に暮らしながら感じてこられてきたこと、仲間に助けられたことなど様々に語ってくれます。

 

☆このほかにも、社会福祉協議会には地域の様々な方の情報が入ってきています。 困ったときには、相談にいってみたらどうでしょう。

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Q4-1-2:お話をしていただくだけでよいのでしょうか?

◆一方的に話を聞くだけでいいの?

 高齢者や障害者などにゲストティーチャーに来ていただいて話を聞く。このような取り組みが学校の中で増えてきたことはとても喜ばしいことだと思います。しかし、この取り組みが、まだ、子どもたちが一方的に聞くだけで、あとは「ふりかえりノート」に感想を書き込むだけで終わっていることが多い現実に、少し寂しい思いを感じます。
 この方法が子どもたちの高齢者理解や障害者理解にどうほど役に立っているのでしょう。その現状の成果を、もう一度見つめ直しておく必要があるように思います。

◆障害者理解が深まるの?

 福祉とは異なる、他の教科教育などで、学校にゲストティーチャーを招く場合、特別な専門的な知識をもった方に依頼し、その知識を子どもたち向けにやさしく話をしてもらうのが一般的だと思います。各テーマについて、表面的な理解しか出来ていない学校教師が教えるよりも、きっと大きな成果をもたらしてくれているのだと思います。
 しかし、福祉の分野では、高齢者や障害者など当事者をゲストティーチャーに招く場合に、それと同じように考えることができるのでしょうか。そこでは、その方々から専門知識を学ぼうとしているのでなく、その方の人生経験をお伺いし、そこからその人々への理解を深めようとしているのです。このような場合に、ほかの分野の講演と同じように、ほとんどの時間が聞いているだけでいいのかというと、少し疑問を感じます。多くの障害者は、「自分の障害」や「自分の人生」については語れますが、障害者の専門家ではないので、「障害」や「障害者」を一般化した話はあまり得意とは言えません。その違いを理解して話を聞く必要があるように感じます。

◆「1人のひと」としての質問をしてみよう

  障害者をゲストティーチャーに講演に招いた後、子どもたちから出る質問の多くは「毎日の生活で困っていることは?」「自分たちにお手伝いできることは?」といったことです。それも悪くはないのですが、でも、子どもたちにもっと質問してほしいのは、私たちが日常生活で新しい人と知り合う時に聞くような、いろんな質問です。「お生まれは?」「好きな食べ物は?好きな音楽は?」「いつもどこに買い物に行きますか?」など、何でもいいのです。知り合いの年長の人と話す時のように、「自分たちくらいの年齢の時にどのように過ごしましたか」と聞いてみてもいいのです。障害者であることを意識せず、「1人のひと」として誰にも聞くことを当たり前に聞いてみると、自分たちと違ったところだけでなく、自分たちや自分たちの家族と同じところがいっぱいあることに気づかされると思います。
 福祉の当事者をゲストティーチャーとして招いたときには、子どもたちがこんな形で質問できるようにもアドバイスをしてみてください。

◆相互コミュニケーションの繰り返しから理解が始まる

 日常生活においても他者を理解しようとする場合、一方的に話を聞くだけでなかなか実現できるものではありません。相互コミュニケーションを繰り返しながら少しずつ相手への理解ができるようになっているのが実際のところです。
 その相互理解のための基本が、このゲストティーチャーを招く場合に忘れがちであるように思います。たった一度のゲストティーチャーとしての招待であっても、その時間内だけでも様々なコミュニケーションを行うことができます。また、事前・事後教育の場まで含めると、それ以上にいろいろにコミュニケーションを広げることができます。サポートする教師の方が、この繰り返しのコミュニケーションの重大性に気づいてないと、せっかくの機会も効果が薄いものになり、理解を深めさせることはできなくなってしまうのでないでしょうか。
 子どもたちから質問がでないので、仕方がなくお話だけで終わらせてしまう場合も多いとは思いますが、子どもたちから質問を引き出すのが教師の力量ではないでしょうか。それを可能とするには、まずは、教師自身がゲストティーチャーのことを分かりたいという熱意をもつことです。その熱意が、子どもたちにも一緒に理解したいという気持ちを起こさせ、質問やコミュニケーションへと繋がっていくのだろうと思います。

コラム:不便だけど不幸ではありません

 「私は目が見えません。だからといってできないことは特にありません。みんなは目が見えるけど、誰もが同じように何でもできるわけじゃないよね。できるできないは、あくまでもそのひと個人の問題。障害のあるなしにかかわらず、その人がいかに努力をするかしないかの問題です。」小学3年生に向けて、つくば市内にお住まいの視覚障害者の方が、‘みんなと同じ’そして‘不便だけど不幸ではない’というメッセージを伝えようと学校へ出向いてお話をしてくださいます。また、ほんのちょっとの気配りや協力があれば、困る事や不便な点が減ることも伝えます。‘君たちにもできることがあるんだよ’と・・・。
  講話の後、質問がたくさん出ます。「着替えはどうやってするの?」「杖(白杖)はいくらですか?」あどけない質問に丁寧に答えてくださいます。
   翌日Eメールで、「本当に子どもなりに様々な観点から一生懸命質問をしてくれたのでよかったと思います。障害というものは1、2回お話をするだけで分かることではないと思います。子どもはともかく大半の大人も障害者のことを理解してないし、また理解をしようとしないのは事実です。ですから焦らずに時間をかけて多くの人に障害者のことについて理解を得られるように自分なりに伝えて参りたいと考えています。」というお便りが・・・。あまり伝わらないことに気落ちされているのでは?と心配する私たちへの気配りも忘れません。

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